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一番重要なのに一番簡単!?家づくりの第一歩「棟木の加工」3ステップをリアル写真解説【連載】「セルフビルド冒険の書Vol.9」@千葉県長柄町

  • 2023年06月04日公開

こんにちは、木こりの源です。

木こりでも大工でもなかった”レベル1のど素人”が、木を伐って、加工して、家を建てる!と無謀にやり始めたものだから、そりゃ大変!
師匠に怒られ、最初はボッチで、やっとできた仲間にはなじられ、失敗を積み重ね…。 5年かけてやっと完成するまでの、貴重なノウハウをここに記していきます。

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連載9回目は、伐って製材した木の仲間を柱や梁などにレベルアップさせる”加工”の第一歩。「棟木」の作り方を見ていきましょう。

棟木って何者!?

棟木は「むなぎ」と読みます。
棟(むね)とは、屋根の1番高い所のこと。建物の数を数える時に1棟、2棟と、建物単体を表す単位としても使います。

棟の横に通して、建物の骨組みをまとめ上げる木となるのが、棟木なのです。
棟木をすえて初めてその建物の姿、形がわかるようになります。

棟をすえている様子

そう!まさにパーティの先頭に立つ"勇者"と言っても過言ではありません!

そして、棟木をすえた時に、家屋の守護神と大工の神を祀って、躯体工場が無事に終わったことを感謝するとともに、完成まで工事の安全を祈る儀式を行います。これを上棟式(じょうとうしき)といいます。
柱や梁などの構造材を組み上げ、外装、内装工事への道が開けるイベントなのです。

昔は、骨組みの上から餅やお菓子、小銭などをまいて、近隣の方に振る舞っていました。 家の周りの地面を、大勢の方に踏み固めてもらうためにも餅まきをしたという説もあります。

上棟式の祭壇

餅まきの様子

では、ここからは棟木の作り方を説明していきます。 まずは、伐った丸太の中から棟木となる勇者を探しましょう。

ぶっといからって勇者にはなれない!「棟木の資質」とは?

勇者に選ばれるには、どんな資質を持っていなくてはならないのでしょうか?

長さ:6メートル材が望ましい

屋根の頭頂部の長い部分で使うので、6,300mmの長さに切り出した6メートル材を使います。

太さ:太くもなく細くもなく

実は、直径40cm以上の太い材は、棟木に向きません。
勇者は、軽やかに先頭に立たなくてはならないので、重すぎてもダメなのです。

丸太の元(太い方)が直径26cm、末(細い方)が直径24cmくらいで、テーパー(先細り)が少ないものがベストです。

この2つの資質を持つものが棟木として選ばれ、この材を三面に製材すると勇者が爆誕します。

製材する時に、伐って来た丸太の資質を見抜き、どの場所の材として使うか、だいたいの目星をつけておくことが重要となります。
特に棟木にする6メートル材は、伐り出せる本数が少ないので、貴重な材から勇者を選別することになります。

▶︎「製材」を紹介した記事はこちら

え、技術は初級!?「棟木の作り方」3ステップ

勇者に成長させるというからには、棟木の加工は高度な技術を要するのではないかと思ってしまうのでは? 実は、使う技術は「初級」。最初に加工するにはうってつけなのです。

さっそく棟木を加工していきましょう!

棟木へとレベルアップさせる3ステップはこちら!

  1. ひたすら「転び止め」加工
  2. 「柱ホゾのメス」を作る
  3. 「背割れ(セワレ)」を入れ、磨き上げる

以上で立派な棟木へと成長してしまうのです。

では、具体的な加工方法を見てみましょう!

ステップ1:ひたすら「転び止め」加工

まず、ここで使う武器をご紹介!
・ノコギリ
・ノミ
・玄能(金づち)

電動工具を使う必要がなく、手動の工具を使うことに慣れるという意味でも初心者向けです。
まずは、銅の剣と皮の盾を使いこなすといったところでしょうか!

なんの転び止めを作るのかと言うと、「垂木(たるき)」の転び止めです。

垂木とは、下の写真のように棟木にかける幅45mm、高さ60mmから120mmの角材で、屋根の下地になる角材のことを言います。
この材の細い面を下にして使うので、倒れないように転び止め加工が必要なのです。
垂木を、角材の芯から芯の間を455mm間隔あけて棟木にかけていくと、屋根の下地になります。

垂木がつくと建物の形が現れる

"墨"どおりに加工する

「墨付け」とは、柱や梁などを加工するために、出来上がりの形状の線や目印、木材を接続する継手(つぎて)の位置を書くことです。

▶墨付けのやり方はこちら

棟木につけた墨付けの線、"墨"のとおりに加工していきます。

「転び止め」の墨

ノコギリで墨を切る

ノコギリで両脇の墨どおりに切れ目を入れ、墨の真ん中辺りに、もう1〜2本切れ目を入れます。
真ん中に入れた切れ目は、どこまでの深さに削れば良いかのガイド線になります。

ノミと玄能を使って平らに削り取る

最初は大胆に大きく削り、仕上げは鰹節を出すくらいに薄く削って行くのが、きれいに仕上げるコツです。
真ん中に入れた切れ目がなくなる程度まで削り、平らな面を作ります。
垂木と同じ幅の材を差し込んでみて、はまったら完成です。

端が欠けないように、上端と下端に切れ目を作っておくのもポイント

最初は大胆に

仕上げは鰹節を削るように

垂木と同じサイズの角材(治具:じぐ)を差し込んで確かめる

ひたすら約30個!垂木をつくる

垂木の間隔は455mnなので、6メートル材の棟木にかける垂木の数は、6000÷455≒13で、隅にも作るのでプラス1すると14個となります。
これを棟木の両側に作るので、28個という事になります。 というわけで6メートル材の棟木1本につき、30個弱の転び止めを作っていきましょう。

まさに最初、あの青いプルプルしたヤツを何匹も倒すのと同じ感覚!
ノミ技術のレベル上げにうってつけなのです。

ステップ2:「柱ホゾのメス」を作る

【使う武器】
・角ノミ(電動で四角い穴を開ける道具)
・ブロワー(木くず等を風で吹き飛ばす道具)
・ノミ
・玄能

下の写真のように「棟束(むねづか)」という、棟を支える柱をすえる為の加工です。

角ノミで穴を数か所開ける

電気角ノミで墨の内側、四隅とその間に適宜何か所か穴を開けます。
木くずが大量に出るため、ブロワーで飛ばしながら作業を進めます。

角ノミは、あるとないとで作業時間が大違い。大幅に短縮できます。
グループ攻撃できる「じゅもん」を持っていると戦闘が早く終わる、といった感じでしょうか!

ノミで残った部分を切り取る

ノミの刃裏を外側に向けて、墨付け線の真上から玄能で叩き、少しずつ崩すようにして、穴を開けていきます。

ノミで側面や底をきれいに仕上げる

ノミに体重をかけるようにして、側面をきれいに整えます。
穴の底面は、ホゾ穴に入れる「ホゾのオス」の長さより5㎜ほど深く掘り、ホゾが確実に入る余裕をもたせます。 この余裕を"逃げ"といいます。
この逃げは、戦いを放棄し逃げだすといった選択ではありません!

ステップ3:背割れ(セワレ)を入れ、磨き上げる

【使う武器】
・丸ノコ(電動の円形ノコギリで、材を切る道具)
・グラインダー(円盤のヤスリを高速で回転させる道具)

乾燥すると、丸太には必ず"割れ"が出てきます。
この割れを、完成した時に見える部分や不要な箇所に出さないよう、割れを集中させるために入れる切れ目を「背割れ」といいます。
ほとんどの丸太材は、背面真ん中あたりに背割れを入れます。

梁の背割れ

棟木の場合は、両側の転び止めの真ん中に背割れを入れていきます。

棟木の背割れ位置

丸ノコで背割れを切る

丸ノコの歯を目一杯出して、背面の芯墨(しんずみ:丸太の芯に書いた線)を切っていきます。

このとき、木を繊維方向に切るのですが、これを「縦引き(たてびき)」と言います。

木を繊維方向に切ると、摩擦がかかり非常に切りにくいため、丸ノコに負荷がかかる作業となります。
丸ノコのモーターを焼き付かせないように、ゆっくり切りましょう。

初心者が縦引きするのは大変

バッテリーの丸ノコなら、18Vだとすぐにバッテリーを消費するので、36V以上のものを使うことをオススメします。

グラインダーでひたすら磨く

総仕上げとしてグラインダーで磨いていきます。

私が自宅を作る際はほぼ1人で全ての材を磨きましたが、なかなか時間がかかる作業なので、仲間に手伝ってもらうことをオススメします。
ひたすら磨かれてきれいになっていく木の表面と向き合う作業なので、おのずと無の境地に入っていくのです。

誰でも簡単にできる作業なので、今は家づくり体験したいといって来た方にまずお願いしています。
都会で疲弊している人がこの作業をした時、頭を真っ白にして集中できるから「ちょっとした瞑想状態」と言っていました。
皆に協力してもらいましょう!

こうして、伐って仲間にした丸太を勇者「棟木」へと成長させるのです。

今回は、ここまでで Save

次回は、「柱を作る」へ To Be Continued

この記事を書いた人
NPO法人ふるさとネッツ理事/セルフビルドプロデューサー/木こり/移住定住コーディネータ―/長柄町TVディレクター
木こりの源

2017年より、NPO法人ふるさとネッツの理事となり、荒廃林を自ら整備して排出された杉材を使いログハウスをセルフビルド。 このノウハウを活かして、現在は東京と千葉を往復する2拠点生活を実践しながら、「セルフビルドサポーター」の資格制度を作り、多くの地方がめざす地域創生を「林業」から実現する日本初のモデルとなるべく邁進中。

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